2013年7月16日火曜日

社会に出たときに役立つ教育を―教師体験談 船登惟希(2010年サマープログラム教師)

今回の活動日誌では、Youth For 3.11の設立者であり、Teach For Japanの学習支援事業で指導経験のある、船登惟希さんをご紹介します。現在DeNAに勤務している船登さん。

寺子屋での経験、Youth For 3.11TFJとのつながり、現在の仕事から自身の教育観まで幅広くお聞きしました。



基本情報
船登 惟希(ふなと よしあき)
東京大学大学院理学研究科卒。Learning For All(Teach For Japanの前身)で知り合った仲間四人と学生団体Youth For 3.11を立ち上げる。
現在は()DeNAに勤務。著書は「宇宙一わかりやすい高校化学」など。
①勤務先での業務内容
・ショッピング統括部のマーケティング(ビジネス)
・ビッダーズ ネットでものを買うためのシステムを管理
・マーケティング
②趣味
・読書 ・本を書くこと
③好きな給食
・揚げパン


1、Teach For JapanYouth For 3.11での経験 

Teach For Japanを知ったきっかけ何ですか?
就職活動をしていたときに民間企業に興味が持てなかったので、「社会企業家」をキーワードにリサーチをしていたら、Teach For Americaを見つけました。
そこで日本版はないのかなと思って、ネットで「Teach For Japan」を検索にかけると松田さん(Teach For Japan CEO)のブログがでてきたので、面白そうだなと思ってコンタクトを取りました。
Teach For Japanではどのような活動をしたのですか?

最初は団体スタッフとして、各大学の支部を作る動きをしていました。
その後、2010年のサマープログラム(夏季の行われる短期の寺子屋くらぶ)で教師をしました。


―実際に現場を経験した寺子屋の良かった部分はでしょうか。
1つは教師同士の議論や研修を通して、問題解決のためのノウハウを知り、学んだことをすぐに現場で生かせるところですね。そこで自分が立てた仮説が正しいかどうか分かるのが良かったです。教師と子どもという人と人とで対話しながら進むため、フィードバックがすぐに返ってきます。自分が教えた子どもは、勉強にあまりやる気が無かった。11つ丁寧に解き方を教えて、解けるようになって褒めていくうちにやる気をだして来たんですけど、今度は調子に乗り始めて。()そこでちょっときつめに叱ったらすごく落ちこんでしまいました。…そこはあまり厳しく言わない方が良かったのかなと思います。五日間を終えて、子どもに集中力がつき、信頼関係が生まれました。



もう1つ、本当に良かったなと思うのは、寺子屋で一生つき合っていけるような仲間に巡り会えたことです。寺子屋では、よりよい指導のために自分が今までどのような教育を受けて生きて来たか打ち明けることも少なくありません。そういった自分をさらけ出す機会って普通の友達ではなかなかないし、教育という課題・分野を熱く深く語り合ってお互いにフィードバックして高めあえる。そこでまたリフレクションして次に生かす。そういった環境が寺子屋にありました。



Youth For 3.11について、Teach For Japanとの繋がりを教えて下さい。
Youth For 3.11の立ち上げメンバーに出会えたきっかけがTeach For Japanだったというのも1つなんですけど、Youth For 3.11のモデルも最初は若者が被災地に行って問題解決能力やリーダーシップを身につけるというTeach For Americaのものを取り入れようとしていました。しかし、現場で求められている人材とは元気で、言われたことを忠実に実行出来る人材であり、勝手なことをするとかえって迷惑になると分かり、そこで学生同士の価値観のぶつかりあいがありました。そこから「一つの目標に向かって行く」という意識を学生間で統一し、方向性を切り替えて、ハードルの低いプログラムを提供することを強みにして活きのいい大学生を集めてくるマーケティングの役割をするモデルに変えたのです。今のYouth For 3.11が外部から評価されているのは、ハードルの低いボランティアプログラムを提供し、学生が東京へ戻って来た際、被災地での学び、というよりは被災地に行ってショックを受けた人に対して、リフレクションを行い次に繋げられる場を設けていることです。そしてその仕組みはTeach For Japanから持って来たものでした。


2、今後のビジョンについて


―ご自身のキャリアの展望はいかがですか?

自分のキャリアとしては、独立しても今の会社にいても、当然組織として利益を求めるという点で変わらないと思っています。
自分はそこまで利益重視ではないので、会社にいるより独立した方が自由度はあるのかもしれないなとは思いますが。
独立にしても会社にしても、要はお金を生み出す仕組みを作ることが大切だと思っています。


―教育関係で何かビジョンを持っていますか?

今アジアでは公文式という日本の教育コンテンツが大ヒットしています。これが成功しているのも、地域に関わらず、適用出来るからです。レゴも創造性や空間把握能力がつくため、世界中で使われていますよね。今後やりたいことは、人間の本質を見極めた上で、幼児教育の分野をITに落とし込んで、創造力を鍛えられるようなものを作ってみたいです。

DeNAに入社してからは、具体的にこんな成長をした、というのはありますか?

一つの企画を考える際に、ユーザーのことをすごく考えるようになりました。
その結果として、人間の本質の理解が深まった。
また、企画を考える過程にロジック的思考が必要なので、非常に思考力が鍛えられたと思います。

3、日本の教育について

―今の日本が抱えている教育問題がなんだと思いますか?

無駄な時間を過ごしているなあと感じています。社会に出たときに求められる能力を全く教育できていない。勉強はあくまでもエンターテインメントではなく実学であるべきだと思うので、自分自身の経験からも、社会に出て必要な能力を学ばせてあげたい。インプットさせるだけではなく、アウトプットを併用した教育ができると良いと思います。

―それを踏まえたときに、教師に求められる能力はどのようなものだと思いますか?

問題解決能力ですね。本当の問題になっている部分を見極めて、それを解決するために行動を起こすことができる能力が求められると思います。
現状は起きている事象を表面的にしか捉えられていないし、考えても行動に移すことができていない。
課題に対してコミットして、一歩踏み出してアウトプットを出すことが必要だと思います。
アウトプットする過程こそが一番学ぶことができると思うので。
教育に興味がある人こそ、経営だったり政治だったりといった様々なことにアクションを起こすべきだと思います。
ほとんどの生徒が社会に出るので、その生徒たちに教育する教師こそ、さまざまな分野を学ぶべきだと思います。







編集後記
「学びに対して貪欲。」船登さんはそんな人でした。自分がインタビューの中でちらっと「「世界を変えるNPOの条件」という本は社会セクター版のビジョナリーカンパニーらしいですよ」と話すと、船登さんはちょっと待って下さいと言ってiphoneを取り出しすぐにAmazonで書籍を調べていました。そういった学びのアンテナの高さがとても印象に残っています。

Teach For Japan
木村喜生/岡本梓/平尾耕太郎

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