こんにちは!広報部の丸山です。冬季プログラムが始まりました!
前回の記事に引き続き、今回はLearning for All(以下LFA)での教師経験が教育実習に生かされたことについて、皆さんにお伝えしていこうと思います。
【教育実習前―LFAでの教師の経験-】
教育実習が始まる前に、学習支援ボランティアをしていたのですが…ある出来事がきっかけで、子どもを取り巻く環境が子どもの将来を左右しているのではないかと考えるようになりました。
ある日のこと、周りの子どもたちがノートを取っている中、何もせずに、じっとしている一人の男の子の姿が目に入りました。気になった私は彼に「ノート取ろう?」と声をかけてみました。すると、その男の子は「分からないんだからどうせ取っても意味ないよ」という返事。この言葉に私は衝撃を受けました。
勉強することを諦めてしまう前に、彼に何か出来ることはなかったのか、学習に躓いてしまっても、出来るようになりたいと思える機会はなかったのかと疑問に思いました。学習に遅れを取ってしまったのは、あの男の子が努力しなかったからではなく、努力出来る環境がなかったからではないかと考えています。
その日を機に、彼のような子どもたちがもっといるのではないか?と考えるように。そして勉強を諦めてしまっている子どもに十分な学習環境が提供されていないことに対して課題意識を持つようになりました。(これはLearning for Allと関わることになったきっかけの一つです。)
そんな時にLFAに出会いました。私が夏のプログラムで指導した子どもたちは、「どうせ私はバカだから」と言うのが口癖でした。
私は「どうせもう…」と諦めかけている子、頑張っていてもその努力を自分で認められない子に対して、「学習を通じて、自分の可能性を信じ、何事にも挑戦出来るようになって欲しい。自分は出来るんだという気持ちを持てるようになって欲しい。」という思いを持って接しました。
特に子どもが出来たことを心から褒め、努力の過程に対しても褒めていくこと、私が見つけた子どもの良いところを伝えていくことを心掛けて、指導をしました。
その結果少しずつではありますが、子どもたちは変わっていきました。「どうせ私はバカだから」と言っていた子が、「私って出来るじゃん!」とつぶやくようになったり、指導最終日には「私、夢に向かって頑張ってみる!そのために今は勉強を頑張らないといけないんだね」と言ってくれたりしました。(まだまだお伝えしたいエピソードがたくさんあるのですが…今回はこの辺にしておきますね。)
教師の言葉かけひとつで、子どもたちの気持ちや行動が変わっていくことがよく分かった夏でした。
また、私は子どもが理解しているかどうか確認したいとき、「大丈夫?」という言葉を頻繁に使っていました。この言葉は、何気なく使ってしまう言葉ですよね。でも「大丈夫?」って聞かれた子どもはなんと答えるでしょうか?本当は大丈夫じゃない場合でも、きっと子どもは「大丈夫」って答えてしまうはずです。そのことに初めて気が付きました。
LFAでは授業後に、指導を振り返る機会があり、子どもがしたこと、考えていたこと、感じていたこと、したかったことを振り返ります。その振り返りを通じて、私の指導は教師の一方的な思いだったということに気が付くことが出来ました。私は今まで、教えたい、分かってもらいたいという気持ちから、子どもが何を学びたくてどう教えてほしいのかを全く考えられていませんでした。教師の目線で考えていたんです。子どもの表情を読み取り、共感し、子どもの思考に寄り添うことを意識して授業を行うこと、これもLFAで学びました。
夏のプログラムの経験を通じて、子どもの可能性を信じ、子どもの気持ちに寄り添ってくれる人や挑戦出来る環境があれば、どのような子どもでも大きな成長をすることが出来るのではないか、また「出来た」「分かった」という経験の積み重ねが自信となり、子どもが将来に対して、希望や期待を持ちながら成長していけるのではないか、と思いました。
【教育実習中―LFAでの教師の経験が生きるー】
LFAが対象としている子どもは、学習する環境に困難を抱える子、学習内容を理解するのに時間がかかる子、なかなか授業内容を覚えられない子。このような子どもたちはそもそも褒められる経験が不足しています。そのため自分の良いところに気付く機会がありません。当然、これでは子どもたちが自分に自信も持つことは難しいです。このような子どもたちは学校現場にもいました。
そのため、LFAで一人ひとりの良さや個性を見つけ、それを子どもたちに伝えていったように、教育実習でもこのことを心掛けました。
一人ひとりの良さを見つけると言っても、学習面においてなかなか力を発揮出来ない子どもに対しては、授業以外の場面でその子の良さを見つける必要がありました。そもそも38名一人ひとりの良さを見つけることは、意識していてもなかなか難しいことでした。しかしこの目標を持ったことで、一見しただけでは気がつかないような子どもの良さが見えてきて、子ども一人ひとりに様々な良さや個性があると改めて思うことが出来ました。
子ども自身が自らの良さに気づきそれを生かしていって欲しいという思いを込めて、実習の最後には38人一人ひとりに、私が3週間で見つけた子どもの良いところを書いたお手紙を渡しました。手紙を渡した後、一人の女の子がそっと来て恥ずかしそうにこんなことを言ってくれました。
「先生、このお手紙、私にとって”わすれられないおくりもの”になったよ。ありがとう」
“わすれられないおくりもの”。これは私が9時間かけて子どもたちに授業した単元の題名です。授業自体は多くの課題が残り、上手く出来た授業は正直ありませんでした。でも子どもの中に何となくでも授業を通じて、伝えられたものがあったことを知ることが出来ただけでなく、“わすれられないおくりもの”という言葉で、私にメッセージを伝えてくれたことに感動しました。

”LFAの経験を通じて私が一番得たものは、一人ひとりを見る力。”
きっとLFAで一人ひとりの子どもを見つめる経験をしていなかったら、私は全員の子どもの良さを見つけることが出来なかったかもしれません。そもそもこのような目標自体持たなかったかもしれません。
学校にいると子どもは大人数のうちの一人になってしまい、教師が意識しなければ、子どもが褒められる機会が少なくなる、そんな気がします。大人でも褒められたら嬉しいですよね。子どもなら褒められることはもっと嬉しいと思いますし、褒められることを求めていると思います。だから実習での課題の一つが、3週間で38人の良いところを必ず見つけ、それを褒め、そして彼らに伝えることでした。これはLFAでの経験があったからこそ出来たことでした。
【教育実習を終えて】
教育実習中に経験したことは、学校現場においてほんの一部かもしれません。でも3週間という短い時間の中で、全ての子どもたちが多くの良さを持ち、可能性を秘めていることを改めて知りました。測り知れない可能性を秘めている子どもたちの成長を見守り、その可能性を伸ばしていく教師はやりがいがあり素晴らしい職業であると思いました。
そして一人ひとりの子どもたちと真剣に向き合い、一人ひとりの良さや可能性を見抜き、子どもの無限の力を最大限に引き出す教師、子どもたちに良さや可能性を伝え、彼らが自分に自信を持てるようなきっかけを与えられる教師になりたいと思っています。
もしこの記事を読んで下さっている方の中に、これから教育実習を控えている人、教師を目指している人がいらっしゃったら、是非今のうちから子どもと接する経験をしてみて下さい。きっと貴重な経験になると思います。
正直、LFAでの経験がのちの教育実習でこんなに生かされるとは、思ってもいませんでした!教育実習前にLFAで教師の経験をしたことで、教育実習が有意義なものになっただけでなく、目指したい教師像が見つけることが出来ました。
ここまで読んで下さってありがとうございました。少しでもLFAが気になったら、是非ホームページを見て下さい。
(文:丸山 茜)